9月に最新刊の<next 4years>が発売するので、既刊の感想を上げておこうかと。
アニメ化もされた人気シリーズ『2.43 清陰高校男子バレー部』です。
私がこのシリーズと出会ってから、もう7年も経つみたいです。
もうそんなに経ってるのか…。
何に惹かれたかって、まず表紙のイラストですよね。
私結構ジャケ買い多いんですが、これもイラスト、色合い、文字の配置などどんぴしゃで好みです。
1巻の単行本が出た時には表紙に惹かれつつも、「バレーかぁ、正直あんまり興味ないなぁ…」って感じで見送ってたんですが、文庫が発売した時にまた目に入って気になって、単行本では<second season>なるものまで発売になってて、その表紙がまたよかったんですよ。
イラストもデザインも好きだし、続きが出たってことは1巻がそれなりに人気だったってことだろう…
ってことで、まず文庫の1巻を買ったんですが、これがまあー、よかったんですよね。
なので、文庫の2巻と当時発売されたばかりの<second season>も翌日即行買いました。
以下あらすじ。
ある事件をきっかけに東京のバレー名門校をやめ、母の故郷である福井にやって来た灰島公誓(チカ)は、かつての幼なじみの黒羽裕仁(ユニ)と再会。
天才的な才能がありながらも、バレーが好きすぎるゆえに人を傷つけてしまうチカと、高い身体能力がありながらもそれを持て余していたユニ。
超簡単にまとめると、2人が出会い、影響し合い、衝突しながら成長していく物語です。
って、まとめてしまうと何かあっさり終わっちゃうんですが(笑)
タイトルが「清陰高校男子バレー部」ですが、物語のスタートは中学時代から。
文庫1巻は公誓が清陰バレー部に入部するまで、2巻は公誓が過去の事件を乗り越えるまで。
そして<second season>では、春高バレーの福井県代表の座をかけた試合が描かれます。
(ちなみに<second sesason>は、文庫版では<代表決定戦編>となっています。)
メインはユニとチカの2人ですが、他の面々も個性的でいいやつばかりです。
背は小さいけどバレーへの情熱は他の追随を許さないキャプテン小田に、絶対敵に回したくない有能な副キャプテンの青木、日光アレルギーのため週の半分は女バレと練習している棺野に、かっこいい荊ちゃん。
ユニ・チカ、小田・青木、棺野・荊。
この3組がそれぞれの章の中心になって、物語は進んでいきます。
壁井さんの作品は初めて読んだんですが、好きだなあと思いました。
登場人物の心情が変化する時の描写が、とても素敵。
「心情の変化が丁寧に描かれている」じゃなくて、「心情が変化する時のその場面が丁寧に描かれている」って印象。
丁寧で、簡潔で、わかりやすく染み入ってくる感じ。
心情の風景の描写がきれいって言うのかな。
なかなか伝えるのが難しいですが、とにかく他の作品も読んでみたいなと思える作家さんでした。
で、何といってもよかったのが、<second season>の福蜂工業との代表をかけた試合です。
泣きました。
まじで。
涙が一筋、とかじゃなくて、ほんとにもうぼろぼろと。
<second season>では、対戦相手の福蜂工業側にもスポットを当てていて、キャプテンで絶対的エースの三村統とマネージャーの越智光臣が出てきます。
私自身学生時代は体育会系の部活だったので、本でもアニメでもドキュメンタリーでもスポーツものは共感できる部分が多くて涙腺緩みがちなんですが、今回は越智の言葉にやられましたね。
「俺を春高のセンターコートに連れて行け」
っていう越智の言葉が、三村のやる気スイッチみたいなものになってるんですが、これがね。
物語終盤、越智がこの言葉を叫んだ瞬間、もうぶわっと涙出ましたよ。
今でも思い出すと涙浮かんでくるよ、まじで。
「歳をとると涙もろくなる」ってよく言いますよね。
どこで見たか忘れたんですが、どなたかがこの表現は本当は歳をとると「涙もろくなる」んじゃなくて、「共感力が上がる」んだ、みたいなことを仰ってました。
歳を取って、色んなことを経験して、それが自分の中に蓄積しているから、見るもの、読んだものに対して自分の経験を重ねたり、想像して心を寄せることが自然とできるようになって涙が出る。
そう考えると、涙もろくなるのも素敵なことだなと思いました。
って、ちょっと話がそれたけど、まあだから、私、読みながらボロ泣きしてしまったわけです。
ちなみにさっき体育会系の部活をやってたと言いましたが、私は選手よりもマネージャー歴の方が長いです。
だからこの作品自体はもちろん、越智と三村の関係性に対して特に「共感力」が働いて、彼らの言葉がより深く心の奥に入ってきてシンクロしたんだと思います。
で、「ぶわっ」ときてしまいました。
というわけで、個人的にはこの<second season>に心を打ち抜かれたわけですが、他の人が私ほど「ぶわっ」とくるかと聞かれたら、正直保障はできません…。
でもこの越智・三村以外にも、見所はいっぱいありますから。
登場人物のバレーに対する真っ直ぐすぎるほど真っ直ぐな「好き」の気持ちや、小田と青木の絆とか、胸が熱くなる場面はいっぱいあるので、スポーツもの好きな方は絶対楽しめると思います。
というか、老若男女全方位におすすめできる小説です。
ちなみに私、バレーは学校の授業でやった程度の知識しかありませんでしたが、普通に読めました。
ここ数年では、バレー作品だと『ハイキュー!!』が大ヒットして漫画やアニメを観た方もたくさんいると思うので、普段あんまり小説読まないなあ、という方でも、試合風景とかがイメージしやすいし比較的入りやすいんじゃないでしょうか。
っていうかさ……
読んで欲しいんだよ。
おもしろいから……!
というわけで、次は同シリーズ三作目の<春高編>の感想をあげますね。